アトピー性皮膚炎の原因と症状

監修:いがらし皮膚科東五反田 院長 五十嵐 敦之先生

複雑に絡み合う要因を理解する

1.アトピー性皮膚炎の原因

1-1. 遺伝的要因 1-3)
アトピー性皮膚炎は、家族内での発症が見られることから、遺伝的な影響が大きいと考えられています。これは「アトピー素因」と呼ばれる、アレルギーを起こしやすい体質を受け継いでいるということです。

1-2. 環境要因
現代社会では、様々な環境要因がアトピー性皮膚炎の発症や悪化に影響を与えています。これらの要因は、皮膚のバリア機能を低下させたり、免疫系を刺激したりすることで、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。

・空気中のアレルゲン(アレルギーを起こす物質)2,4)
ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛やフケなどは代表的なアレルゲンです。これらは、皮膚に直接触れたり、吸い込んだりすることでアレルギー反応を引き起こし、症状を悪化させます。

空気中のアレルゲン

・接触刺激物 2,4)
シャンプー・リンス、石鹸、洗剤、衣類(特に合成繊維、ウールなど)、金属(アクセサリーなど)、香料、化粧品、汗、髪の毛、植物など、皮膚に直接触れる物質は、刺激となって炎症やかゆみを引き起こすことがあります 4)。これらの物質は、皮膚のバリア機能を直接的に破壊したり、アレルギー反応を誘発したりする可能性があります。

接触刺激物

・食物アレルゲン 2,4)
食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎の悪化要因の一つと考えられています。食物アレルギーが疑われる場合は、アレルギー検査(血液検査や皮膚テストなど)を行い、原因食物を特定することが重要です。ただし、食物アレルギーが全てのアトピー性皮膚炎患者に関係するわけではなく、関与の程度には個人差があります。

食物アレルゲン

・気候 5,6)
乾燥した気候や冬の寒冷地ではバリア機能が低下し、症状が悪化しやすくなります。一方、高温多湿な環境も、症状を悪化させやすくなります。

・大気汚染 7)
PM2.5や窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質は、皮膚への酸化ストレスや炎症を誘発し、症状を悪化させる可能性があります。

1-3. 精神的ストレス 8)
精神的なストレスは免疫系に影響を与え、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。

1-4. 皮膚表面の微生物 9)
皮膚表面に生息する微生物のバランスの乱れも、アトピー性皮膚炎の発症や悪化に関与していると考えられています。なかでも、アトピー性皮膚炎の患者さんでは黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌が多く検出されることが知られています。

2. アトピー性皮膚炎の主な症状

2-1. 湿疹
湿疹とは皮膚表面の炎症のことで、主に次のようなタイプがあります。
・紅斑(こうはん):皮膚が赤くなっている状態のことです。
・丘疹(きゅうしん): 皮膚が盛り上がった状態のことです。
・鱗屑(りんせつ):皮膚の表面から剥がれ落ちる角質のことです。
・痂皮(かひ):液体成分(血液など)が乾燥して固まったものです。
一般的には「かさぶた」と呼ばれ、掻き壊して傷になった部分に形成されます。
・苔癬化(たいせんか): 慢性的にかゆみが続き、繰り返し掻くことで皮膚が厚く硬くなり、表面がゴワゴワとした状態になります。皮膚の表面の溝が目立ち、まるで苔(こけ)の表面のようになるため、苔癬化と呼ばれます。皮膚の色が黒ずんで見えることもあります。

湿疹

2-2. かゆみ
かゆみはアトピー性皮膚炎の中心的な症状であり、日常生活に大きな支障をきたします。
・夜間のかゆみ: 夜間はかゆみがひどくなる傾向があり、睡眠不足の原因となります 10)
・掻破行動(そうはこうどう): かゆみを我慢できずに掻いてしまう行為は、皮膚のバリア機能をさらに破壊し、炎症を悪化させる悪循環につながります 11)

症状に合わせた適切なケアを
アトピー性皮膚炎の症状は、人によって現れ方が異なります。それぞれの症状に合わせた適切なケアと治療が大切です。自己判断で市販薬を使用したり、医師の指示なしに治療を中断したりせず、必ず医師の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。

症状に合わせた適切なケアを
参考文献
  1. Leung DYM, Bieber T. Atopic dermatitis. Lancet. 2003;361:151-160.
  2. 佐伯秀久, 他. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024年版. 日皮会誌. 2024;134:2741-2843.
  3. Thomsen SF. Atopic dermatitis: natural history, diagnosis, and treatment. ISRN Allergy. 2014;2014:354250.
  4. Tamagawa-Mineoka R, Katoh N. Atopic Dermatitis: Identification and Management of Complicating Factors. Int J Mol Sci. 2020;21:2671.
  5. Engebretsen KA, et al. The effect of environmental humidity and temperature on skin barrier function and dermatitis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016;30:223-249.
  6. Sargen MR, et al. Warm, humid, and high sun exposure climates are associated with poorly controlled eczema: PEER (Pediatric Eczema Elective Registry) cohort, 2004-2012. J Invest Dermatol. 2014;134:51-57.
  7. Fadadu RP, et al. Air Pollution and Atopic Dermatitis, from Molecular Mechanisms to Population-Level Evidence: A Review. Int J Environ Res Public Health. 2023;20:2526.
  8. Hall JM, et al. Psychological Stress and the Cutaneous Immune Response: Roles of the HPA Axis and the Sympathetic Nervous System in Atopic Dermatitis and Psoriasis. Dermatol Res Pract. 2012;2012:403908.
  9. Kim JE, Kim HS. Microbiome of the Skin and Gut in Atopic Dermatitis (AD): Understanding the Pathophysiology and Finding Novel Management Strategies. J Clin Med. 2019;8:444.
  10. Elias PM. Barrier function of the skin. Curr Allergy Asthma Rep. 2008;8:299-305.
  11. Nomura T, Honda T, Kabashima K. Multipolarity of cytokine axes in the pathogenesis of atopic dermatitis in terms of age, race, species, disease stage and biomarkers. Int Immunol. 2018;30:419-428.
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